UAEのビジネス・マナー

   

交渉事はお互いの信頼関係が成立して始まる 急がば回れ
実行の自信がなければ約束はしない

 中東湾岸の経済の中心であるUAEを中心としたお付き合いのマナーについてMIYOKOの実体験を交えて解説したいと思います。

挨拶・プレゼン

 名刺交換は一般的に行われますが、日本のように、会う人ごとに義務的に渡す必要はありません。渡さなくても失礼と思われることは少ないようです。
 ビジネス用の名刺は英語(表)とアラビア語(裏)の両面使いが一般的です。中東でビジネスを目指す外国人なら、同様の名刺を用意することはイメージ・アップにつながります。
 会社の業務案内やプレゼン資料などは、アラビア語で用意できれば申し分ありませんが、日本語からアラビア語への完全な翻訳は、費用や人材の点で手配が容易ではありません。無理はしなくても英語で十分です、特に英語が共通語化しているUAEでは、軽く見られることはありません。
 しかし、アラビア語は話せなくても「アッサラーム・アライクム」(あなたに平安がありますように。おはよう。こんにちは。こんばんは。)など、簡単な挨拶や決まり言葉くらいは、アラビア語を使うように心がけましょう。相手に悪い印象を与えるはずはありません。

交渉・契約

 ビジネスの進行状況は、一般的に「スローペースで結論までに時間がかかる」と受け取られがちですが、これもよりよい方策を求める経過に外なりません。そうかと思えば、速攻で物事が決定される場合もしばしば見られます。何度出張を重ねても交渉が進まず諦めかけた頃、急転直下決着を見ることがあります。
 ゆえに、外国人にとってはビジネスのペースをつかむのが難しく、交渉途中でギブアップすることも少なくありませんが、粘り強く誠意を持って対処し続けることが、お互いの理解を深めることにつながります。交渉事をスムーズに進めるには、双方から信用を得られるローカルの友人・知人の存在は大変重要です。
 中東のビジネスマンは、自分が知っている相手となら、もしくは信用できる人物の仲介があれば、取引に応じようとします。また重要な打ち合わせには、証人の同席を要求されることが少なくないので、証人役を頼めるローカルの友人・知人がいなければ交渉は進めにくいでしょう。欧米と比較して個人的な関係が重要視されます。
 「完全なギブ・アンド・テイク」の世界ですから、大事な頼み事をしたいなら、相手から何か頼まれることも覚悟しておくべきでしょう。したがって、小さな借りは作らないように注意しましょう。
 お互いの信頼関係が成立して、それから交渉事が始まります。彼らは信義を大事にするので、一旦信頼を得ることができれば、その後の付き合いは難しくありません。ただし用のある時だけ連絡したり、仕事の話しかできないようでは、たちまち嫌われてしまいます。さしたる用がなくても「話題の映画を観た、新しく開店したレストランに行った、夏祭りがあった」など四季折々の日常茶飯事をメールするだけでもよいのです。

付き合い・接待

 何よりも付き合いのよさが重視されます。食事を共にするのはコミュニケーションの手段とみなします。家庭に食事に招くのが伝統的な接待の仕方ですが、外国人が約8割を占めるドバイなどでは、ホテルやレストランにゲストを招待したり、反対に招待されたりも抵抗なく行われています。
 人数に対して多すぎる豪勢な料理が供されますが、これが伝統的な中東のもてなしです。慣れない外国人はこれをビジネスの成功へ結びつけて期待しがちです。商談を断る場合も、相手の落胆度を軽減させるために、このようなもてなしが行われることがありますので、状況をよく見極めてください。
 左手は不浄なものを扱う時に使います。(トイレでも左手のみです)食事の際や、人に物を渡す場合も左手を使うのは失礼に当たります。
 服装は日本の日常と同じと考えてよいでしょう。ただしディナーやパーティーに招かれた場合は、控えめな服装よりドレスアップして行く方が、確実に丁重な扱いを受けます。また一流ホテルでも驚くほどカジュアルな装いの、欧米の観光客を見かけることがありますが、欧米スタンダードがどこでも通用すると勘違いしているだけです。日本人が真似をする必要は全くありません。
 会話の内容は節度を保てば特に気を使うことはないでしょう。(どの国でも会食の場で過激な話題を控えるのは常識の範囲です。)年長者の話に耳を傾けることは重要ですが、遠慮したり卑屈になることはありません。黙っているよりは、しっかりとした見解を述べることで周囲から一目置かれ、正々堂々と付き合うことで信用を得られます。

   

宗教・ラマダン

 イスラム教が多数を占めますが、外国人が8割のUAEでは他の宗教も認め合い共存しています。そのため、普段は旅行者にとって、あまりイスラム教の影響を感じることはないでしょう。
 しかしラマダン(断食月。2007年は9月13日~約1ヶ月)ともなれば、イスラム教の戒律が一番ゆるやかなドバイでさえ、ガラリと様子か変わります。人々は日の出から日没までは飲食を絶ちます。その間、街のレストランも一斉に閉店しています。外国人観光客を相手にし、複数のレストランを擁するホテルでさえ、入り口をカーテンで覆い客の出入りを目立たなくして、時間もメニューも制限して、かろうじてどこか1ヶ所だけ開店している有様です。
 イスラム教徒以外はラマダンの習慣を強要されたりしませんが、このような状況下では、(たとえ旅行者であれ)習慣に従わざるを得ません。中東でビジネスを目指す外国人なら、相手国の文化に敬意を表して従うことから(ラマダンの習慣を分かちあうことで)信頼関係につながる付き合いが始まります。

約束

 UAEを含む中東全般では、約束をする時よく最後に「インシャア・アッラー」(本来の意味は、神の意のままに…人間がどんなに望んでも、先のことは何が起こるか分らない。)と付け加えます。インシャア・アッラー(まあ考えときましょう。気が向けばね)とぼやかして、約束を守らないといわれますが、裏を返せばいい加減な約束はできない。約束を破ることは罪悪と捉えられることが多いからです。最初から約束を守る意思がないので、インシャア・アッラーと誤魔化すと腹を立てるのは見当外れです。
 日本人が一番失敗しやすいのが「引越ししました。お近くにお越しの折は、ぜひ新居にお立ち寄りください」(真に受けて訪問すれば迷惑がられる)の日本式メンタリティで、中東の人にディナーに誘われても、実際は「インシャア・アッラー(行く気がない)」なのに「Yes」と答えてしまうことです。
 接待の項で述べたように、中東では大事な接待(食事)は家庭で行います。遠慮したつもりで約束をキャンセルして、日本人駐在員とゴルフに行き、数年取引停止に近い状態になった、某日本企業がありました。(これはMIYOKOが遭遇した実話です)
 日本の確かな技術力から、日本人は裏切らないだろうと信じられています。出来ない事を約束したり、あいまいな返事は避けることです。なぜ出来ないか、正直に説明することが大事です。

最後に

 これはマルチカルチュアでイスラム教の戒律がゆるやかな、ビジネス都市ドバイを中心とした一般的なアドバイスです。中東のすべての国に当てはまるものではありません。

MIYOKO Akiyama (2007-07-03)
 
■ 写真について MIYOKO Akiyama撮影