2007年5月3日



(中段)(下段) ゴージャスマダム
がしかし、ここで競馬=ギャンブルという固定観念からいったん離れて、ドバイ・ワールド・カップを、おらが国の世界に誇る国際的文化・スポーツ・イベントと考えれば、このような盛り上がり方も納得できます。サッカーのワールド・カップで自国チームを熱狂的に応援するサポーターと同じように、自国の馬、ひいきのジョッキーの活躍を信じてひたすら声援を送っているのです。
ただ、馬券はなくとも一攫千金のチャンスがないわけではありません。7レースすべての勝ち馬を当てると10万Dhs(およそ330万円)の賞金があたります。指定の用紙に記入し、会場何箇所かに設置された投票箱に入れるだけ。最終的に、何人が的中させたか分からずじまいでしたが、競馬しろうとにもかかわらず思わず参加した私は4レースを的中させました。いやいやこれだけでも、けっこう熱くなれるものです。
もちろん、豊かな資源ゆえに得られたオイル・マネーの力あってこそとはいえ、そんなイベントを実現し、国中が盛り上がる仕掛けに仕立て上げ、多くのドバイ・ワールド・カップ・ファンを国内のみならず世界中に生み、集客することに成功しているモハメッド殿下とは大したお方ではありませんか。


完成すれば世界一の高さになるブルジュ・ドバイ
(下段) 建設中のブルジュ・ドバイ(後方) (右)どこもかしこも建設中のドバイの市内
7つの首長国のうち今回訪問したドバイは、とにかくどこもかしこも工事中なのですが、元はといえば砂漠だった所ですから工事現場も含めて造成中の広大な土地は砂塵のまいあがる砂地。まるで人工島の開発風景です。しかも建設中の建物はどれもその高さを競い合うかのような摩天楼だらけ。いったいバブルははじけないのだろうか、と心配になりますがどうもその気配は今のところありません。
潤沢なオイル・マネーで順調に発展を続けているものの、石油に依存しすぎない国をめざして外資の誘致、金融都市としての拠点づくり、観光産業の育成に熱心に取り組んでいるからでしょうか。実際、モハメッド殿下が中心になって仕掛けられる多彩なアイデアが実現し、インフラだけでなく充実したソフトが提供され、世界各国の経済人をはじめスポーツ・文化分野などからビジネス・チャンスを求める熱い視線を集めています。もちろん、ドバイ・ワールド・カップもそのひとつ、もっとも成功をおさめている例のひとつです。
国のうつわ(制度)自体はきわめて前近代的であるにもかかわらず、盛られる酒はきわめて未来的。この不思議な国はどこに向かっているのでしょうか。
その謎を解くひとつの答が先にあげた数字にあるのではないでしょうか。ローカル2対外国人8の人口比率。通常、国家を構成する国民はよくいってその逆、ともすると外国人が2割に達するはるか以前に入国制限だの同化施策だのといった動きが出てくるものですがこの国はその真逆。むしろより多くの人材を受け入れ(来る者を拒まず)、同化を強いず多様性をのみこみ、そのまま発展の原動力にしているのです。来る者は来る者で、もちろんチャンスを求めて来るのですが、あくまでこの国の制度を選択してのこと、仕事が得られ安全なこの国を第2の故郷として愛し、その発展に貢献しています。
「この国では、隣の人に合わせようとしなくていいのよ。それぞれの出身国のかっこうで堂々と歩いているし、それを奇異な目で見る人もいない。とても居心地がいいわ」滞在中に知り合ったエクアドルからの移住者の言葉が象徴的に感じられます。

国の制度はこのまま破綻することなく続くのか、急速な発展に影の部分はないのか、もちろんネガティブな要素もはらんでいないはずはないと思うのですが、少なくとも今回の短期滞在で見えるものはありませんでした。むしろダイナミックなパワーの魅力は現状路線の続行で当分衰えそうもありません。 世界でも稀少と言える方向に進んでいるように見えるこの国の行く末はどうなるのか、当分は見守っていきたいと思った私は、すでにこの国の魅力の虜になったのかもしれません。

2008年度のドバイ・ワールド・カップは3月29日(土)開催されます。皆様また来年ドバイでお会いしましょう!
レポート: 樋口景
写真: 樋口景 秋山美代子
Maydanの完成予想図:Meydan LLC提供
ブルジュ・ドバイの完成予想図:Emaar提供